ウォッチ試作3 – TWELITE DIPの接続

TWELITE DIPの接続しとリレースイッチの起動に必要なトランジスタの接続を行います。

当サイトで紹介する光電管タイム計測器の制作方法は安全性・信頼性を保証するものではありません。 当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。

TWELITE DIP の接続

電源とTWELITE DIPをつないでいきます。

:TWELITE DIPのVcc(+電源)と3.3V電源プラスをつなぐ。
10:8~11番列のアナログ入力端子を全て3.3V電源プラスとつなぐ。
11:TWELITE DIPのGND(-電源)と15番列をつなぎます。
12:親機として設定するため、TWELITE DIPのモード設定1端子と3.3V電源マイナスをつなぎぐ。

TWELITE DIPでは親機と子機の間で相互通信を行うことができます。そのためには、必ず1台を親機として設定しなくてはいけません。親機同士、子機同士の通信を行うことはできません。

ここまでこれば、あとはデジタル出力1端子をリレースイッチにつなげば、ストップウォッチのスタート/ストップを操作できる。そう思っていました…。

【当初の考え1】
ストップウォッチをリレースイッチの6番ピン、12番ピンにつなぎます。すると、通常時は出力1端子はHighのため、リレースイッチのコイルに電流が流れ、スイッチが切り替わります。この状況では、ストップウォッチはつながっておらず動きません。

【当初の考え2】
センサーからの信号を受信すると、出力1端子はLowになります。するとコイルに電流が流れず、スイッチが切り替わります。ストップウォッチをつなげた6番ピン、12番ピンがつながり、ストップウォッチのスタート/ストップを操作できるはずでした…。

この回路ではリレースイッチは動きません。なぜなら、リレースイッチを動かすための電流が少なすぎるからです。

リレースイッチについて、残念ながら今回使用するタイプのリレースイッチのデータシートでは詳細がわかりません。そこで、秋月電子で販売されている別の3Vリレーのデータシートを見てみます(データシートはこちら)。

データシートからは、3Vを印加したときのNominal Current(定格電流)が66.7mAとなることが分かります。これは、3Vの電圧がコイルに加わると、66.7mAの電流が流れるということになります。逆に言うと、それだけの電流が流れないと、リレースイッチを起動させることができません。今回使用するリレースイッチでも極端な違いはないと思います。

一方、TWELITE DIPの出力端子の駆動出力上限は最大で4mAとなります。 回路によっては4mA以上の電流が流れますが、リレースイッチを動かすほどの電流は流せません。何より、画像のような接続ではTWELITE DIPの駆動出力上限以上の電流が流れることになり、故障の原因となってしまいます。

このように、電圧は満たしても電流が不足するため、リレースイッチを動かすことができません。そこで登場するのがトランジスタです。

トランジスタの接続

トランジスタとは、信号を増幅またはスイッチングすることができる部品です。

トランジスタを使用することで、TWELITE DIPからの少ない電流でリレースイッチを起動することができるようになります。

トランジスタにはNPN型PNP型の2種類があります。

今回使用するのはPNP型になります。

PNP型トランジスタでは、ベース(B)にかかる電位が下がると、エミッタ(E)からコレクタ(C)に電流が流れるようになります。ベース(B)にかかる電位が高い場合は、エミッタ(E)からコレクタ(C)には電流が流れません。

この特性を利用することで、TWELITE DIPの出力を利用してリレースイッチを動かすことができます。

デジタル出力1端子からの接続

TWELITE DIPでは、親機から複数台の子機へ同一信号を送信することができます。一方、複数台の子機から親機の同一端子へ信号送信を行うと、場合によっては通信に不具合が生じることがあります。そのため、スタート/ストップを検出する2台のセンサーの入力端子の番号を異なるものにする必要があります。

DIYで作る光電管タイム計測器では、デジタル入出力1端子とデジタル入出力2端子の2つを使用しています。

まずは、デジタル出力1端子に対応した接続を行っていきます。

13:TWELITE DIPのデジタル出力1端子をブレッドボード17番列右側とつなぐ。
14:4.7kΩ抵抗(ベース抵抗)を17番列右側から17番列左側につなぐ。
15:17番列とベース(19番列)をつなぐ。
16:PNPトランジスタを19~21番列左側に設置する。
17:3.3V電源プラス列とエミッタ(21番列左側)をつなぐ。
18:コレクタ(20番列左側)とリレースイッチ(22番列左側)をつなぐ。
19:4.7kΩ抵抗(ベース・エミッタ間抵抗)をエミッタ(21番列左側)と17番列左側につなぐ。
20:リレースイッチ(22番列右側)と3.3V電源マイナス列をつなぐ。

これで、TWELITE DIPからの電流によってトランジスタが動作し、3.3V電源からの電流によってリレースイッチを動かせるようになります。

デジタル出力2端子からの接続

次にデジタル出力2端子に対応した接続を行っていきます。

21:TWELITE DIPのデジタル出力2端子をブレッドボード25番列左側とつなぐ。
22:4.7kΩ抵抗(ベース抵抗)を25番列左側から30番列左側につなぐ。
23:30番列左側とベース(28番列左側)をつなぐ。
24:PNPトランジスタを26~28番列左側に設置します。※1台目とは向きが反対になります。
25:3.3V電源プラス列とエミッタ(26番列左側)をつなぐ。
26:コレクタ(25番列左側)とリレースイッチ(22番列左側)をつなぐ。
27:4.7kΩ抵抗(ベース・エミッタ間抵抗)をエミッタ(26番列左側)と30番列左側につなぐ。

これでセンサー側のデジタル入力2端子がマイナスになり、信号が送信された場合でも、1台目と同様にストップウォッチを操作することができます。

リレースイッチの起動

リレースイッチが起動する様子を見ていきます。

TWELITE DIPの出力端子は、通常時にはHigh(電位が高い状態)になっています。そのため、エミッタ(E)からからコレクタ(C)への電流は流れません。

信号受信時には、出力端子がLow(電位が低い状態)になります。すると、エミッタ(E)からコレクタ(C)へ電流が流れます。今回の場合は、3.3V電源からの電流がリレースイッチに流れます。電源からの電流のため、リレースイッチを起動させる電流が不足する心配はありません。

ベース抵抗

この時、電源を通してエミッタ(E)からベース(B)方向に流れ込む電流が発生します。TWELITE DIPの出力端子の駆動出力上限は4mAのため、抵抗を用いてTWELITE DIPに流れ込む電流(ベース電流)をコントロールする必要があります。

ここでは、4.7kΩの抵抗を使用しています。

ベース抵抗の計算については、以下のHP等を参考にしています。

まずはリレースイッチを動かすために必要なベース電流を求めます。

【ベース電流】
ベース電流は以下の計算式から求めることができます。

ベース電流(Ib)=負荷電流(Ic)÷直流電流増幅率(hfe)

負荷電流(Ic)とは、リレースイッチの起動に必要な電流のことで、ここでは100mAとします。

直流電流増幅率(hfe)とは、トランジスタが電流を増幅させることのできる割合で、製品によって異なります。今回使用しているトランジスタでは、200~400となります。低い値を採用してhfeは200とします。

以上のことより、ベース電流は以下の計算式で求められます。

200 ÷ 100 = 0.5mA

0.5mAであればTWELITE DIPの駆動出力としても問題ありません。このように、ベース電流が0.5mA程度となるように抵抗値を調整する必要があります。

求められたベース電流となるよう、ベース抵抗の値を調整します。

【ベース抵抗】
トランジスタには約0.6Vの電圧がかかります。 直列回路では各回路の電圧の総和が電源電圧と等しくなるため、抵抗には3.3V-0.6V=2.7Vの電圧がかかると想定します。

2.7V ÷ 0.0005A = 5400Ω(5.4kΩ)

この数値はあくまでも理論値であるため、今回の制作では少し余裕を持たせて4.7kΩの抵抗を使用しています。テスターで電流を測定してみると、0.4mAの電流が流れていました。これなら問題なく利用できそうです。

デジタル出力2端子でも同様の電流が確認されました。

これでTWELITE DIPに流れ込むベース電流は4mA以下となり、故障の心配がなくなります。

ベース・エミッタ間抵抗

回路の保護と、スイッチング動作の安定のため、ベース・エミッタ間抵抗を入れています。以下のHP等を参考に、ベース抵抗と同様の4.7kΩを使用しています。